2017-4-7
(Rev.1)2017-12-26
アメリカ南西部美術館めぐり(3月16日〜23日)
山本 雅晴
表題の朝日サンツアーに参加した。参加人数:8人。なお本ツアーは新規のツアー・ルートです。
ルート:成田→ダラス(2泊)→サンフランシスコ(1泊)→ロスアンゼルス(3泊)→成田
現地:それぞれの地域で現地駐在の日本人が要領よく案内してくれた。
成田からダラス・フォートワース空港へはJLの直行便で11時間強。テキサス州は日本の1.8倍の面積、約2500万人擁し近年産業・交通の要所として発展している。空港は7本の滑走路を有する世界最大級の空港で、アメリカン航空のハブ空港となっており、ロスアンジェゼルス空港などパンク状態のところから引っ越す企業も増えているとのこと。米トヨタ自動車もロスからダラスに本社機能を移すことを決定し、このようなことで文化・ホテル・コンベンションセンターに力を入れているとのこと。フォートワースは人口約85万人で、昔は牛や綿花の集散地など一次産業が主流だったが、今は鉱工業・流通・サービス産業が盛んである。また、音楽・美術などの文化活動も盛んで、ヴァン・クライバーン(第1回チャイコフスキイ・コンクールのピアノ部門の優勝者)の活躍の地で彼を記念してヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールが1962年から4年おきに開かれており、2009年に辻井伸行氏が日本人として初めて優勝して一躍有名となった。
3月16日(木) 晴れ 歩行距離:約6km
ダラスは現在人口約130万人のテキサス州内陸部の都市です。J.F.ケネディ大統領が1963年11月22日に暗殺された場所で、その現場も訪れた。小生が大学の4年の時、太平洋横断ケーブルが敷設され初めての実況のニュース速報として聞いたことを記憶している。またその前日はフォートワースの街で最後の演説をしている、その場所にはケネディの銅像が立っており、そこにも立ち寄った。
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ダラス美術館(鑑賞時間:約3時間)かなり展示面積が広く、絵画・彫刻・工芸とジャンルも幅広く博物館を兼ねている。絵画を中心にすべてのブースを鑑賞した。いわゆるオールド・マスターや17世紀以前の絵画は手薄だが、近代の欧米の絵画やアフリカ・アジア・太平洋地域の美術・工芸品は幅広く展示されていた。また、入場しなかったが、特別展(メキシコ展)は賑わっていた。
ゴッホの最晩年のラージキャンバス(50x100cm)13作品の一点「麦の束」が見れた。
3月17日(金) 晴れ 歩行距離:約6km
昔の牛の取引場の名残り、ストックヤードと牛追いショーや小博物館を見学した。
A
フォートワース現代美術館(70分):安藤忠雄設計で2002年12月にオープンした、コンクリート・ガラス・水という素材を生かした建物です。現代美術美術作品が多数展示されていた。ポロック、ウォーホル他小生の知らない作者の作品が多くあった。
B
キンベル美術館(13:30〜16:00):1972年に開館した。有名な建築家ルイス・カーンが設計した本館とレンゾ・ピアノ設計の近年完成した新館はいずれも照明効果が抜群で展示品のメンテナンスも良く最高の環境でティッツァーノ、ティントレット、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ラトゥールなどの作品を鑑賞できた。また、ルーベンス、レンブラント、ベラスケス、グレコ、クラーナハなどオールド・マスターや近代絵画も一通り収集展示されていた。カラヴァッジョとラトゥールの「いかさま師」が同室で見れるのも格別でした。ミケランジェロの12〜13歳ごろの絵画「聖アントニウスの苦悩」を初めて見た。幾多の著名な作品を1960年代以降に購入しており、現在もまだ成長している美術館です。恐るべき資金力のアメリカの美術館の一つです。
3月18日(土) 曇りのち晴れ 歩行距離:約5km
ダラス・フォートワース空港を11時過ぎに発ち約4000kmを4時間強の時間でサンフランシスコ空 港に着き、美術館に直行した。時差が2時間あるため、見かけ上2時間得したようになる。SFは人口86万人、近郊の町々を合わせると500万人で、スタンフォード大学・シリコンバレーなど高所得階級の人が多く、近年住居・物価が世界一高くなっているらしい。
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サンフランシスコ近代美術館(14:10〜16:20):約3年かけて増・改築され昨年5月に再オープンした。近代〜現代およびコンテンポラリの美術作品が広いスペースに展示されていた。現代およびコンテンポラリの美術作品の展示数はNYのMoMAより多く、SF・MoMAと呼んでいる。鑑賞時間が短いのでゆっくりは鑑賞できなかったが、一通り見た。現代〜コンテンポリアートは米国が主導しており、質・量とも間違いなく世界一であろう! ポンピドゥーセンターよりはるかに上回っている。しかし、マチス、ピカソなど近代の作品は手薄なように感じた。主に米国内のマチスの作品の特別展「マチス展」が開催されていたが、チケットはすでにソルド・アウトで入場できなかった。
3月19日(日) 曇り 歩行距離:約6km
美術館の開館前にSF湾にかかるゴールデンゲートブリッジ界隈を散策した。
D
SFリージョン・オブ・オナー美術館(9:50〜12:20)
A. 特別展:キンベル美術館と共催で「モネ初期作品(1858〜72)展」が開催されていた。キンベル美術館で先に開催・終了。日本を出発前に情報をがあり、日時指定の電子チケット(30$)を入手していたのでスムーズに入場できた。個人所蔵を含め世界各国からの53点が展示されていた。このうちには日本の丸沼芸術の森所蔵で(埼玉県県美術館に寄託展示)の「ルエルの眺め」も展示されており国内の展示では撮影禁止だが、ここでは撮影可能だった。5点を除き写真撮影可能であった。開館時間を繰り上げていたが、日曜日で非常に盛況であった。個人蔵もあり、半分以上が初見で中身の濃い展示会であった。
B. 常設展示:砂糖会社の社長だった夫妻が収集した作品をSF市に寄贈しそれをベースに他の人の寄贈も含めて、紀元前2500年から20世紀にまたがる絵画・彫刻・工芸品約8万5000点所蔵され、大きく6ゾーンに分類して自然光を取り入れて展示されている。絵画についていえば、大作はあまりないが、ルーベンス、レンブラント、グレコ、ティントレット、G.ラトゥールなどからモネ、セザンヌ、ゴッホまでの作品をカバーしている。アメリカ美術の作品類は1キロ程離れたデ・ヤング美術館に展示して分担して運営されている。彫刻もロダンの作品が充実している。また、陶磁器や工芸品も沢山展示してあった。時間が足りず、走るようにして見て回った。
SF空港を16時過ぎに発ちロスアンゼルス空港に17:40着、飛行時間は1時間強だが着陸してから自走時間とバスでスーツケースの着荷の場所まで30分以上と渋滞が甚だしい。空港から20キロ位のホテルまでも1時間と道路の渋滞もひどい。
3月20日(月) 曇りのち晴れ 歩行距離:約6km
E
ゲッティ・ヴィラ美術館(10:10〜11:10):紀元前6500年から紀元後400年までの、ギリシャ、ローマ、エトルリアに関する展示品を約44000点を所蔵・展示している。ポール・ゲッティが1954年に自宅の隣に博物館を開設、手狭になったため丘の下に新たに新築し、1974年に開館した。P.ゲッティの没後「ゲッティ・センター」が新築され、1997年に完成後、ゲッティ・ヴィラと収蔵品が修復され2006年にオープンした。入場料は無料。ギリシャ時代の数々の陶器・ガラス器や彫刻が館内や庭に展示され、古代ローマ風の雰囲気を味わうことができる。
F
ノートン・サイモン美術館(パサディナ) 晴 (13:40分〜15:40):N.サイモン氏(1907〜93)は食品・飲料・化粧品・レンタカーなどのコングロマリットを運営し巨額の富を築き、1950年代から絵画・彫刻などの美術品の収集を初め、14世紀ルネッサンス時代から20世紀までのヨーロッパ、アメリカ、アジアノサクヒン12,000点ほど所蔵している。常時1000点ほどが展示されている。大作ではないがボッティチェリ、ラファエロ、クラナッハ、ルーベンス、レンブラントなどのオールド・マスターからマネ、モネ、セザンヌ、ゴッホなどの近代絵画も一通りそろっている。東洋の仏像彫刻などもあい、庭にはロダン、マイヨール、ヘンリー・ムアなどの彫刻も配置されている。
3月21日(火) 曇りのち雨: 歩行距離:約6km
Gポール・ゲッティ・センター:P.ゲッティ(1892~1976)は20世紀の前半に石油ビジネスで巨万の富を築き、自らのコレクションをもとに1954年に美術館を創設した。1976年にイギリスで死去したが、遺言により遺産の大部分が美術館を管理するゲッティ財団へ託された。これに不満な一族による訴訟合戦が繰り広げられたが一応決着し、世界一資金力のある美術館といわれている。入場料は無料。教育・研究・文化活動・作品の充実に豊富な資金を充てている。南西部の最大の美術館の一つである。年間の入場者数は200万人を越え全世界の美術・博物館の28位、全米ではNY-MoMAにつぐ第4位です。
20世紀の後半に購入しうる最高の絵画・彫刻・工芸品を揃えている。絵画のオールド・マスターの作品から近代まで。作品の購入にあたってはクリスティーズやサザビーズの入札で幾たびか話題を集めた。
彫刻・陶磁器・工芸品などフランスの王朝風の調度品の下で豪華に展示している。また、ややかすんでいたが標高270メートルの丘のビュー・スポットからのロスの街や海岸線の見晴らしも素晴らしい。生前は良くない風評の付きまとったP.ゲッティも天国では、子供たちや家族ずれで賑わうこの地をさぞ満足していることだろう!
Hロスアンゼルス・カウンティ美術館:夕方近くになって雨足が強くなってきた。ここから数キロのドジャースタジアムで日・米野球の試合が行われるとのこと。現地ガイドの人からそちらにも行きますか?
A. ルター宗教改革500年の特別展:「デューラーとクラーナハ ドイツ・ルネッサンス美術展」
ベルリン、ミュンヘン、ドレスデンなどの美術館からデューラー、クラーナハ、ホルバインの絵画やリーメンシュナイダーの彫刻などが展示されていた。すでに、ドイツノ現地の美術館で見たものが多いので、約30分くらい鑑賞した。
B. 常設展示:アメリカ西海岸で最大規模の美術館で広さ、展示品のジャンルと数は夥しい。これらを2時間ぐらいで見ようとするのは至難の業である。予めもらっていた主な絵画・彫刻の縮小コピーを頼りに、できる限り見ようと走り回った。短時間ではあるが主要な絵画はなんとか見ることができた。ここにも、ルーベンス、レンブラント、ハルス、G.ラトゥールなどのオールド・マスターズからモネ、セザンヌ、ゴーギャンなどの近代絵画やロダンの彫刻もそろえていた。
また、別棟の日本館にも興味があったので十数分覗いてみた。ここの照明は日本でも若冲や江戸時代の日本画の収集家で有名なジョー・プライス氏が資金を提供して造ったとのこと。障子風のガラスの採光で屏風や日本画の作品に合っている。
短い日数でアメリカ南西部の主な美術館を見て回った。やはり美術品などの高価なものは富の蓄積されているところに集まるということを実感した。なかなか言葉だけでは言い表されないが今まで未知であったアメリカ南西部の美術館の様子が多少は分かった。
米国内の各地に点在する美術館は非常に多くかつ、内容も豊富であり行ってみたい所は沢山あるが都市部を除き、効率よく廻ることは年寄りには不可能である。特に現代アート作品の蓄積・展示は全世界の半分以上が米国にあるのではないだろうか?
写真なども添付したいがメモリー容量が大きくなり、複雑になるので割愛した。従って、文章だけの退屈な紀行となった。
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