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三重豪NZ協会メールマガジン                          

  季刊 サザンクロス三重

         
Southern Cross MIE

                 
                
                 2020年3号(通号11号) 2020年8月3日発行


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もくじ

NHKラジオ出演記    岩崎 恭彦

オーストラリアのブッシュファイア(山火事)     宮本忠

オークランド日本語絵本図書館からのお便り(報告)



 NHKラジオ出演記        岩崎 恭彦
 
 皆様、はじめまして。三重大学人文学部で地方自治論を担当している岩崎恭彦と申します。宮本忠先生の後任として2004年に本学に着任しました。皆様にはもっと早くにご挨拶させていただくべきところ、こうして遅くなりましたことをお詫び申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、新型コロナウイルスの感染拡大が、私たちの日々の暮らしや働き方に種々の影響をもたらしています。皆様の身近なところにもさまざまな変化がおありのことと存じます。私には、職務上、これまで思ってもみなかった2つの経験がありました。

1つは、去る2020年7月2日に、NHKラジオ第1の「武内陶子のごごカフェ」という番組に出演したことです。自分の声が全国生放送の電波に乗るなど、まったく思いがけないことでした。番組へのゲスト出演者は、普段なら東京・渋谷のスタジオに招かれるところですが、いまはすべて電話でのリモート出演になっているそうで、三重の地から私の出番と相成ったのも目下の状況があってのことかな、と考えております。

 その日のテーマは「探訪!全国おもしろ条例」。自治体が制定する条例(ローカルルール)に注目し、なかでもユニークな条例を紹介しました。一例をあげると、かずのこ条例(北海道留萌市)、りんごまるかじり条例(青森県板柳町)、そうめん条例(奈良県桜井市)、ちゃんぽん条例(愛媛県八幡浜市)、等々、全国には食にまつわる数々のおもしろ条例があります。三重県名張市にも、「食べてだあこ」名張のお菓子でおもてなし条例という、条例名に方言の入った珍しい条例があります。個人的な思いとしては、せっかくの機会に、もっと三重のご当地条例のことを発信したかったのですが、全国放送がゆえの限界を感じました。とはいえ、義務や罰則を定めたものでなくとも、地域の良さを残そう、活かそうという目的で、全国津々浦々で創意工夫をこらしながら条例を制定する自治体の動向の一端を紹介でき、貴重な経験をいたしました。

そうそう。思ってもみなかった経験のもう1つ、それはオンライン授業です。2020年度前期、三重大学ではすべての授業を原則オンラインで行っています。いつもは電子機器をいっさい教室に持ち込まない(というより使い方すらわからない)超アナログ型教員である私が、講義もゼミも、Zoomというビデオ会議システムを使いインターネットを介して配信するなど、考えたこともありませんでした。その悪戦苦闘、七転八倒、艱難辛苦の様子については、また別の機会にご報告させていただければと思っております。

【筆者紹介】  いわさき やすひこ、三重大学人文学部准教授、上記の食にまつわる条例を含め、番組内でとりあげたおもしろ条例については、次のウェブサイトをご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/detail/gogocafe20200702.html[2020年7月26日最終確認]



オーストラリアのブッシュファイア(山火事)    宮本忠
 
 僕は昭和期にオーストラリアの島の州タスマニア州の州都ホバートに住んでいた。山火事のニュースがよくラジオやテレビで報じられていた。夏のある日、ラジオが「山火事が衰えずホバートの民家に近づいていますのでご注意ください」と話しかけていた。いつものようにタスマニア大学環境研究センターの2階研究室で仕事をしていたとき、センター長が興奮状態で研究室に飛び込んで来られた。「ブッシュファイアです。接近してきました。」咄嗟に僕は注意勧告に来られたのだと思った。センター長は早口で、「これで山が蘇る。緑の若い芽で覆われる。」とうれしそうに言われた。彼は、オーストラリアの自然保護運動のリーダーの一人であり、生物学博士であった。

 山火事は、牧草地や農地、ときには住宅地にまで燃え広がる。植物には、開花時期があり、それが山火事の発生期に一致するものもあるという。山火事後の新しい植生は、動物にとって好ましい食環境になる。オーストラリアへの先住民であるアボリジニーは山火事の燃え方や広がり方をよく観察し、災いのはずのブッシュファイヤーが彼らに有利になることも知っていたという。これはかれらの知恵である。オーストラリアの二大環境問題は山火事と水害という説もある。理由は、「開発」の名目で山林を切り倒し、大牧場や都市化を進展させてきたからだ、とのこと。

 豪NZ協会は、本年3月に恒例の海外行事「メルボルン市郊外のモーニングトン半島でのファーム・スティ(農家滞在)」体験旅行を企画していた。しかし参加予定者及び役員会との慎重な協議により、中止しました。中止の直接のきっかけになったのは、次のような在日本メルボルン総領事館の「注意」であった。「大規模な山火事が発生していますビクトリア州及び南オーストラリア州では,気温上昇と乾燥及び強風により,州内各地で大規模な山火事が発生しています。両州の消防当局は緊急警告を出し,一部地域に対し退避勧告を出しています。」メルボルンは、ビクトリア州の首都です。

 僕は、外国に出かける前には必ず外務省の海外の安全情報を点検します。友人から中東でのボートクルージングに誘われたとき、外務省の安全情報は「危険」でしたので応募しませんでした。しばらくして案の定、中東でドンパチが始まりました。日本語新聞『日豪プレス』は、こんな記事を伝えています。(https://nichigopress.jp/ 2020年7月10日)

 オーストラリア大陸東南部のブッシュファイアについてのウーロンゴン大学の研究によれば、ブッシュファイアの圧倒的大多数は人為的な原因によるものである。同大学のブッシュファイアの環境リスク・マネージメント・センターのキャスリン・コリンズ氏が筆頭著者として「International Journal of Wildland Fire」に発表した研究論文は、「ニューサウスウエルズ州及びビクトリア州両州では、人口密度とブッシュファイアの出火件数の間に相関性が見られる」。研究チームは、1997年から2009年までの期間の両州の144生態系地域で起きた113,000回を超えるブッシュファイアを調べ、原因が判明しているブッシュファイアのうち、47%が人為的な事故によるものであった。例えば、タバコの火の不始末、野焼きやキャンプファイアの火の燃え広がり、電線の火花の引火。次いで40%が放火によるもの。研究チームは、各生態系地域の1,000平方キロあたりの「出火密度」を計算し、その出火密度の考えられる要因を推定している。要因としては人口密度、植物自生面積、熱暑日数、標高、落雷回数、降雨量、風速、湿度など。

 その結果、5種類のモデル化により、コリンズ氏の研究チームは、「人口密度が最大の要因」とした。人口の増加につれて出火場所が西から海岸方面に移っている。それ以外の要因は統計上「有意」ではなかったと判定している。そればかりでなく、原因不明のブッシュファイアも人口密度と相関性を持っていることを突き止めており、コリンズ氏は、「これまでもほとんどのブッシュファイアが人間的なものではないかと考えられてきたが、はっきりとした証拠を示したのはこの研究が初めてだ。今後、気候変動と合わせて人口増加がブッシュファイア発生率増加を予測させる。消防当局がブッシュファイアの発生確率を予測する上で助けになることを望んでいる」、とのべている。

 従来から、山火事の原因として、乾燥大陸といわれているオーストラリアでは、落雷などの自然発火の他に、タバコのポイ捨て、かれらの大好きな野外バーベキュパーテーでの残り火の不始末などの人為的な原因で山火事が頻繁に起きる、といわれてきた。上記の大学の研究の調査場所は、シドニーとメルボルンというオーストラリアの人口密度の高い二大都市を含むニューサウスウエルズ州とビクトリア州を対象において実施された貴重な注目される調査研究である。

 また、モナシュ大学の講師兼自然災害専門家のポール・リード氏は、昨年11月に発表した研究結果の中で次のように述べているという。「一般的にオーストラリアの森林火災の9割弱は、人的活動が原因 ... 人的活動には、故意の放火や、不注意や軽はずみな行動が含まれる。 オーストラリアでの年間約6万2000件の森林火災の13%余りは、落雷によるものである」(https://nichigopress.jp/ 2020年7月10日)。オーストラリアは乾燥大陸であるとともに油分の多いユーカリの木の国でもある。落雷などの自然発火は当然、問題にされているのであるが。

 現在日本では、新型コロナウイルス問題により、国際間の交流をオーストラリア、ニュージーランドほか数か国に限定して前代未聞の鎖国政策を取っている。他面、東京、大阪、名古屋などにおいて問題が鋭角的に見えてきた。人口密度の高い大都市に問題があることが明確になってきている。これは前述のオーストラリアの山火事に係る大都市問題と共通していることを示唆するのではないか。新型ウイルス感染問題は、単に「マスク」に限定される問題でなく、空気(大気)汚染問題、環境問題という視点の重要性を暗示しているのではなかろうか。

【筆者紹介】 みやもと ただし、三重オーストラリア・ニュージーランド協会会長



オークランド日本語絵本図書館からのお便り(報告)
 
 オークランドにある日本語絵本図書館を運営するJapan Kauri Education Trustの代表者宮内直子様から宮本会長あてにメールがありました。日本語絵本図書館の設立に際して本協会は2006から2007年にかけて絵本の寄贈を呼びかけ、多くの方々のご好意によりたくさんの絵本や紙芝居などを贈ることができました(協会ホームページ、ニュースレター16号(2007年初夏号)をご参照下さい)。その後2016年に宮本会長夫妻が図書館を訪問し、交流を深めました(協会ホームページ、会長の目2016年12月6日「日本語絵本図書館訪問記」をご参照下さい)。


 ところが、新型コロナ・ウィルスの影響でスポンサー企業が撤退し、活動場所が奪われてしまったとのことです。会員のみなさまには、本協会とご縁のあった団体の現状をお知らせしたく、宮内様からのメールをそのまま紹介させていただきます
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 宮本様、

 大変ご無沙汰いたしております。豪雨のニュースがNZにも届いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。被害が甚大なようですが、ご家族、お友達などご無事でいらっしゃることを祈っております。

 さて、この度は大切なご報告がありご連絡を差し上げました。

 すでにご存知かもしれませんが、これまで私どもの活動を大きくサポートしてくださっていたGulliver 社のニュージーランド撤退に伴い、私どもも事務所の移転をすることになりました。これまでGulliver 社の皆様には、宮本様にもお訪ねいただきましたJapanese Children's Libraryの活動場所を無償貸与していただいておりましたが、このコロナの影響のためニュージーランドから撤退されるというご決断をNZロックダウン後にご決定されたそうです。非常に突然のことでしたが、私どものような小さなコミュニティーグループにとって、同社からのご支援というのは非常に大きく、この5年で大きな飛躍をさせていただいたことに感謝の気持ちでいっぱいでおります。

 しかしながら、資金面の問題に加え、現時点で子ども向けの絵本や児童書を1万冊以上抱える私どもの活動に見合う新たな活動場所が見つからない状況が続いており、オークランドカウンシル、Kaipatiki Local Board の皆様、地域のNPOなどからアドバイスをいただいたり、各種助成金申請を行ったり、クラウドファンディングを実施したくさんのみなさんにご支援もいただいておりますが、まだまだ長期的な運営の見通しが立たない状況です。Japanese Children's Libraryを閉鎖して1か月ほどになりますが、子どもたちからの図書館再開への願いがたくさん届いており、この図書館を大切な居場所としてくれていたみなさんのためにも、何としても再開をしたいと考えております。

 宮本様、そして設立時にはたくさんの本をご寄付くださった会の皆様にはご心配をおかけし大変申し訳ありませんが、また改めてご報告をさせていただきたいと考えております。どうぞお体にお気を付けてお過ごしください。

Japan Kauri Education Trust

Director Naoko Miyauchi021-086-77777





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